洗ったはずのペットのベッドや毛布から、数日でまたあのニオイが戻ってくる——。

これには理由があります。

ペットの皮脂は、人の皮脂とは成分が違います。
硬いロウ状の成分(ペット特有のワックスエステル)が多く含まれています」(ライオン)

いつもの洗剤で普通に洗っても落ちにくい理由が、ここにあります。ライオンが公開している手順をもとに整理します。

ペットの皮脂は「ロウ」に近い

ライオンの説明です。

「ペットのからだから出る汚れ(皮脂)には、人からの汚れと異なり硬いロウ状の成分(ペット特有のワックスエステル)が多く含まれています

ロウは常温で固まる性質があります。水では溶けず、常温の洗濯では落ちにくい——だから繊維に残り、そこで菌が分解してニオイになります。

そのためライオンは「ペット特有の汚れを落とす効果の高いペット用品専用の洗剤の使用をおすすめします」としています。

犬の体のニオイの原因と対策 で解説したとおり、犬はアポクリン腺がほぼ全身にあり、脂質を含む汗が皮脂と混ざります。その皮脂が布に移り続けていると考えると、ベッドが臭う理由は明快です。

手順①:洗う前に毛を落とす

これは省略できません。ライオンははっきり書いています。

「そのまま洗濯機で洗濯すると、毛がほかの洗濯物についたり洗濯機の排水管に詰まったりするほか、乾燥機能のついた洗濯機では乾燥ダクトに毛が詰まってトラブルを起すことがあります」

対処法も具体的です。

洋服ブラシで振り払ったり、粘着テープで取り除いたりするなどの処理をして、できるだけ事前に落とすよう工夫しましょう」

洗濯機は毛を取る機械ではありません。入れる前にどれだけ落とせるかで、仕上がりと洗濯機の寿命が変わります。

手順②:つけおきで「ロウ」をゆるめる

ライオンが示すつけおきの方法です。

  1. 「洗面器などにペット用の布製品がつかる程度のぬるま湯(約40℃)を用意」
  2. 「その中に通常使用する1回分の量のペット用品専用の洗剤を入れて、濃い目の洗剤液をつくります」
  3. 「洗剤液の中に布製品を入れて30分〜2時間つけおきします」
  4. 「つけおきが終わったら、洗剤液ごと洗濯槽に入れ、あとは通常通りお洗濯します」

ポイントは2つあります。

約40℃という温度

ロウ状の成分は温度が上がるとゆるみます。冷水では落ちにくい汚れが、ぬるま湯なら動くようになります。

この考え方は 生乾き臭が取れない原因と落とし方 と共通です。生乾き臭の対処でも40〜50℃のつけおきが有効とされています。温度は洗浄力の一部です。

「濃い目の洗剤液」は例外的な使い方

当サイトの 洗剤を増やしても落ちない では、洗剤の入れすぎがすすぎ残しを招くと書きました。矛盾するようですが、ここは条件が違います

通常の洗濯 つけおき
洗剤の量 目安どおり 1回分を少ない水に溶かす
やっていること 全体を洗う 濃度を上げて汚れをゆるめる
そのあと すすぐ 洗濯槽に移して通常洗濯

洗剤の総量が増えているわけではありません。同じ量を少ない水に溶かして濃度を上げ、最後は通常の水量で洗ってすすぎます。「多く入れる」のとは別の話です。

手順③:早く乾かす

「洗濯後は、風通しの良い場所に干したり、扇風機などで風を当てて強制的に湿った空気を交換するなどして、少しでも早く乾くように工夫しましょう」(ライオン)

ペットのベッドや毛布は厚みがあり、乾きにくいのが難点です。中心部が湿ったままだと、そこで菌が増えて振り出しに戻ります。

扇風機の効果は数値でも示されています。部屋干しで臭くならない干し方 で紹介したライオンの実験では、扇風機の有無で乾燥時間が最大4倍変わりました。厚手のものほど、風を当てる価値があります。

【重要】洗濯機のフィルターを掃除する

見落とされやすいのはここです。

「洗濯が終わったら、洗濯槽のくず取りネットや、乾燥機能のついた洗濯機では、乾燥フィルターに付着したペットの毛を取り除いてください。そのまま放置して洗濯機を使い続けると、ペットの毛が排水管や乾燥ダクトに詰まったり、電気部品の故障の原因になったりします」(ライオン)

洗って終わりではありません。毛は洗濯機の中に残ります。放置すれば、次に洗う人用の衣類にも付きますし、洗濯機自体のトラブルにもつながります。

洗濯槽にニオイが残ると、その後のすべての洗濯物に影響します(洗濯槽クリーナーは塩素系と酸素系どっち?)。

柔軟剤と香りつき洗剤に注意

人用の洗濯と最も違うのがここです。

ペットのいる部屋のニオイ対策 で扱ったとおり、アニコム損保は「香りのする消臭グッズは、香りに敏感な犬にはストレスになることもある」としています。

ベッドや毛布はペットが長時間、顔を近づけて過ごす場所です。人が「いい香り」と感じる強さでも、嗅覚の鋭い動物には過剰になりえます。

「無香」を選ぶのが最も無難です。ニオイを消すために香りを足す発想は、ペット用品では特に相性が悪くなります。

洗えないもの・洗う前に確認すること

ペット用品は洗濯表示が付いていない製品もあります。次の点を確認してください。

確認すること 理由
中身の素材 ウレタンやビーズは水を含むと乾かない・型崩れする
カバーが外せるか 外せるならカバーだけ洗うのが早い
すべり止めのゴム 高温や乾燥機で劣化することがある
接着されたパーツ つけおきで剥がれることがある

厚みのあるクッション材は、乾かしきれないと内部でカビます。表面が乾いていても中が湿っているという状態は、外からは分かりません。

迷ったらカバーだけ洗える製品に買い替えるほうが、長い目で見て管理が楽になります。洗えないベッドを無理に洗って、乾ききらないまま使うのが最も避けたい形です。

洗う頻度をどう決めるか

明確な基準はありませんが、判断材料は挙げられます。

状況 考え方
ニオイを感じる 既に菌が増えている。洗う時期
抜け毛が多い季節 皮脂も一緒に付くため間隔を短く
散歩後に使う 外の汚れが持ち込まれる
梅雨・夏 乾きにくいので洗う日を選ぶ

厚手のものは、乾かせる日に洗うのが現実的です。生乾きで戻すくらいなら、天気を待つほうが結果は良くなります。

洗い替えを2枚用意しておくと、乾燥を待つあいだも困りません。靴のローテーション足と靴のニオイの原因と対策)と同じ考え方です。

ひとこと

この記事でいちばん腑に落ちたのは、ペットの皮脂が「ロウ状」という説明でした。人と同じつもりで洗っていたのに落ちない——その理由が成分の違いにあったわけです。

そしてつけおきの「濃い目の洗剤液」。前回「洗剤を増やすな」と書いたばかりだったので一瞬迷いましたが、よく読むと使う量は1回分のまま、水を減らして濃度を上げているだけでした。「量を増やす」と「濃度を上げる」は別の操作です。重曹の「置く/溶かす」もそうでしたが、同じ材料でも使い方で意味が変わります。

— ニオラボ編集室

よくある質問(FAQ)

Q. 人の洗濯物と一緒に洗ってもよいですか?

毛が付くため、分けて洗うほうが無難です。事前に毛を落としていても、完全には取り切れません。

一緒に洗った場合、洗濯槽のくず取りネットの掃除を忘れないでください。

Q. ペット用洗剤でないと落ちませんか?

ライオンはペット用品専用の洗剤を推奨しています。ロウ状の皮脂に対応する設計だからです。

手持ちの洗剤で洗う場合は、約40℃のつけおきを組み合わせると落ちやすくなります。温度で補う形です。

Q. 洗えない素材のベッドはどうすればよいですか?

カバーだけ外して洗える製品を選ぶのが理想です。すでに洗えないものを使っている場合は、上に洗えるタオルやマットを敷いて、そちらを交換する方法があります。

本体は掃除機で毛を吸い、風を通して乾かしてください。

Q. 天日干しと部屋干し、どちらがよいですか?

早く乾く条件を優先してください。ただし色柄物は直射日光で退色することがあります。

厚手のものは、干す前に洗濯機で追加脱水をかけると乾燥時間を短縮できます。

Q. おもちゃも洗えますか?

布製のものは洗濯表示を確認してください。中に音の出る部品が入っているものは、水洗いで壊れることがあります。

洗ったあとは完全に乾かしてから返してください。生乾きのまま口に入れることになります。

まとめ

  • ペットの皮脂は硬いロウ状の成分(ワックスエステル)を多く含み、人の汚れとは違う
  • 洗う前に毛を落とす。ブラシや粘着テープで。排水管・乾燥ダクトの詰まりを防ぐ
  • 約40℃のぬるま湯に、1回分の洗剤で濃い目の液を作り30分〜2時間つけおき
  • そのあと洗剤液ごと洗濯槽へ入れて通常洗濯
  • 風を当てて早く乾かす。厚手ほど中心が乾きにくい
  • 洗濯後はくず取りネットと乾燥フィルターの毛を取り除く
  • 柔軟剤や香りの強い洗剤は控える。無香が無難

ペット用品の洗濯は、人の衣類と汚れの成分から違います。同じやり方で落ちないのは当然で、温度と洗剤を合わせれば結果は変わります。そして最後は、どれだけ早く乾かせるかです。

参考にした情報

※本記事は公開されている情報をもとに整理したものです。製品によって適切な洗い方は異なります。洗濯表示と製品の説明をご確認ください。動物の体調に不安がある場合は動物病院にご相談ください。