ドアを開けた瞬間の、あのニオイ。

自分の家では気づきにくく、他人の家では真っ先に気づく——玄関はそういう場所です。だからこそ、来客の前に消臭剤を置きたくなります。

ただ、その前に確認したいことがあります。

玄関が臭うのは、玄関のせいではありません。そこに何足の靴が置いてあるかの問題です。

玄関には、汗が集まっている

当サイトで 足と靴のニオイ を扱ったとき、こういう数字が出てきました。

足裏は、1日にコップ1杯の汗をかく。

その汗を受け止めているのが靴です。そして脱いだ靴は、玄関に置かれます。

家族の人数 1日に玄関へ持ち込まれる汗
1人 コップ1杯
2人 コップ2杯
4人 コップ4杯

これが毎日です。しかも玄関は、家の中で最も狭く、最も窓が少ない空間であることが多い。

汗を吸ったものが、狭くて風の通らない場所に、日々蓄積していく。臭わないほうが不思議です。

下駄箱は「乾かない箱」

アシックスは、シューズ保管についてこう書いています。

シューズ保管の最大の敵、それは湿気です」(アシックス)

そして、こうも書かれています。

湿気のある環境に汚れたままのモノを保管しておくと、下駄箱やクローゼットであろうとカビが繁殖してしまいます」(アシックス)

湿気 × 汚れたまま × 閉じた空間——下駄箱は、この3つが同時にそろう場所です。

同じ構造は クローゼット・押し入れ でも扱いました。「閉じている」ことが、そのまま原因になります。

だから、順番はこうなる

玄関のニオイ対策は、次の順で考えます。

  1. 靴を乾かす——持ち込む水分を減らす
  2. 汚れたまましまわない——カビの餌を持ち込まない
  3. 風を通す——溜めない
  4. そのうえで、消臭剤を検討する

消臭剤は4番目です。1〜3を飛ばして4だけやっても、発生源は減りません。

しまう前にすべきこと

リーガルコーポレーションが示している手順です。

靴の中を拭く

ノンアルコールウェットティッシュか、固く絞った布などを使って、靴の中をつま先の方まで拭き取り」(リーガル)

「つま先の方まで」という指定が実務的です。手が届く範囲だけ拭いても、汗が最も溜まるのはつま先側です。

【注意】アルコール入りは使わない

アルコール入りウェットティッシュは色落ちの可能性がある(リーガル)

除菌のつもりで使うと、色が抜けます。指定は「ノンアルコール」です。

靴底と表面も

リーガルは、内側だけでなく外側の手順も示しています。

場所 すること
靴の中 ノンアルコールでつま先の方まで拭く
靴底 汚れを拭き取る(革底はレザーソールリキッド
甲革 馬毛の柔らかなブラシでブラッシング後、クリーム

靴底の汚れは、そのまま下駄箱の中に持ち込まれる土やホコリです。カビの餌になります。

乾かし方

直接日光の当たらない日陰の風通しの良いところで乾かします
直射日光や直火等で急激に乾燥させると革が硬くなりヒビ割れの原因となる」(リーガル)

早く乾かしたくて日なたに出す——これが革を傷めます。日陰と風です。

乾かし方で結果が変わるのは スニーカーの洗い方 でも同じでした。洗うより乾かすほうが難しい。

新聞紙を詰めるのは、要注意だった

靴の湿気取りといえば新聞紙——定番の方法です。

ところがリーガルは、こう指摘しています。

新聞紙は色落ちの心配がある(リーガル)

インクが移る可能性があるということです。特に淡い色の靴、内側が明るい色の靴では避けたほうがよいことになります。

当サイトでは 靴の民間ワザを検証した記事 で、いくつかの定番手法を扱いました。「昔からやられている」ことと「メーカーが推奨している」ことは、必ずしも一致しません。

では何を入れるか

アシックスは乾燥剤を挙げています。

「保管するシューズの中に乾燥剤を入れましょう」
雨や雪、汗などで湿ったシューズをすばやく乾かしてくれます。また、カビの発生を抑えたり、すばやく脱臭してくれたり、シューズの内側を清潔に保ってくれる」(アシックス)

そして、繰り返し使えるタイプについて。

日干しすることで吸湿力が回復し、何度も使える」(アシックス)

吸湿力は使うほど落ちます。入れっぱなしの乾燥剤は、ただの袋になっている可能性があります。年に一度は交換か再生を。

下駄箱と玄関そのものへの対処

風を通す

定期的に風を通し、状態を確認する」「時々箱の蓋を開けて、靴に風を通してあげましょう」(リーガル)

下駄箱の扉を開けっぱなしにする時間を作ってください。外出中でも、在宅中でもかまいません。

閉じた箱を開ける——これがいちばん費用のかからない対策です。

たたきを拭く

見落とされがちですが、たたき(土間)には靴底が運んできた土やホコリが溜まります。掃くだけでなく、拭いてください。

湿った日には、そこが湿気の供給源にもなります。

湿度を見る

アシックスは「気になる方は温湿度計やアプリなどで湿度を計ってみてください」としています。

玄関は家の中で最も湿度が読みにくい場所です。窓がなく、外気に接し、扉の開閉で条件が変わります。数百円の温湿度計を置くだけで、状況が見えます。

防カビ剤を使うときの注意

リーガルは、防カビ剤について「靴に直接触れないよう」注意しています。素材に影響が出る可能性があるためです。

ひとこと

今回いちばん意外だったのは、新聞紙でした。靴に詰める湿気取りとして、これほど広く知られた方法もありません。それをメーカーが「色落ちの心配がある」としている。

考えてみれば当然で、新聞紙は湿ればインクが滲みます。それを湿った靴の内側に押し込むわけです。無料で手に入るという理由だけで定番になっていたのだと思います。

そしてもうひとつ。玄関のニオイを「玄関の問題」として考えている限り、解決しないという点です。4人家族なら、毎日コップ4杯の汗が持ち込まれています。消臭剤1個で処理できる量ではありません。

扉を開ける。お金もかからず、いちばん効きます。地味ですが、今回もそこに戻ってきました。

— ニオラボ編集室

よくある質問(FAQ)

Q. 消臭剤はどこに置けばよいですか?

ニオイの元は靴の中にあります。玄関の空間に1個置いても、下駄箱の中には届きません。

置くなら下駄箱の中ですが、その前に扉を開ける習慣のほうが効果があります。順番を間違えないでください。

Q. 重曹を下駄箱に置くのは有効ですか?

重曹には酸性のニオイを中和する性質があり、吸湿性もあります。ただし性質と限界があるので、重曹の記事 をご覧ください。

吸湿したままでは効果が落ちます。入れっぱなしにせず、定期的に交換してください。

Q. 靴は毎日同じものを履いてもよいですか?

1日履いた靴には、その日の汗が残っています。翌日また履けば、乾く時間がありません。

複数を交互に履ければ理想的ですが、難しい場合は帰宅後すぐ下駄箱にしまわず、一晩出しておくだけでも違います。

Q. 雨で濡れた靴はどうすればよいですか?

日陰の風通しの良い場所で乾かしてください。直射日光や直火での急速乾燥は、革を硬くしヒビ割れの原因になります(リーガル)。

濡れたまま下駄箱に入れるのは、最も避けたい行動です。

Q. 下駄箱がカビ臭いのですが

中身をすべて出し、拭いて、乾かして、風を通してください。靴だけでなく棚板そのものにカビが発生していることがあります。

クローゼットのカビ臭への対処は クローゼット・押し入れの記事 と共通します。

Q. 靴の数を減らせば解決しますか?

収納量に対して靴が多すぎると、風の通り道がなくなります。ぎゅうぎゅうに詰まった下駄箱は、扉を開けても中まで空気が入りません。

7割程度に抑えると、風が通るようになります。

Q. 靴下を替えれば変わりますか?

玄関に持ち込まれる水分そのものを減らせます。素材によって汗の扱いが大きく違うので、靴下の素材の記事 をご覧ください。

なおリーガルは、保管時に「靴用の除菌・消臭ミストやカビ防止ミスト等を一緒に使うのもおすすめ」としています。ただし防カビ剤は靴に直接触れさせないよう注意が必要です。

Q. 玄関に窓がありません

扉を開ける、下駄箱の扉を開ける、サーキュレーターで空気を送る——風は作れます。

湿度が高い日に外気を入れると逆効果になることもあるので、温湿度計を置いて判断してください。

まとめ

  • 玄関のニオイは靴の集積。4人家族なら毎日コップ4杯の汗が持ち込まれる
  • 「シューズ保管の最大の敵、それは湿気」(アシックス)
  • 順番は①乾かす ②汚れをしまわない ③風を通す ④消臭剤
  • 靴の中はノンアルコールで、つま先の方まで拭く(リーガル)
  • 新聞紙は色落ちの心配がある(リーガル)
  • 乾燥剤は日干しで吸湿力が回復する。入れっぱなしは効いていない可能性
  • 乾かすのは日陰・風通しの良い場所。直射日光と直火は革を傷める
  • 下駄箱の扉を開ける時間を作る。費用ゼロで最も効く

玄関の消臭剤を買い足す前に、下駄箱の扉を開けてみてください。

ニオイの元は、そこに閉じ込められています。

参考にした情報

※本記事は公開されている情報をもとに整理したものです。素材によって適切な手入れは異なります。高価な靴や特殊な素材のものは、必ず製品の表示や専門店の指示をご確認ください。