冷蔵庫のニオイの原因と対策|掃除に重曹とクエン酸が使えない理由
冷蔵庫を開けたとき、何のニオイとも言えない独特の匂いがする——脱臭剤を入れても、しばらくすると戻ってくる。
この問題には、意外な前提があります。
低温は、菌を殺す技術ではなく「遅らせる」技術です。
そして詰め込みすぎると、その低温すら保てなくなります。
脱臭剤を足す前に確認すべきことを、メーカーが公開している情報をもとに整理します。
ニオイの発生源は4つに分けられる
日立は、冷蔵庫のにおいを発生源ごとに説明しています。整理すると次のようになります。
| 発生源 | 特徴 | 対処の方向 |
|---|---|---|
| こぼれた汁・食品カス | いちばん多い。雑菌が繁殖する | 拭き取る |
| 食品そのもの | 強いニオイが庫内に移る | 密閉する |
| 氷・製氷機 | 給水タンクの汚れ、塩素 | タンクの手入れ |
| プラスチック部品 | 設置直後に感じることがある | 時間で薄れる |
プラスチックのニオイについて日立はこう説明しています。
「冷蔵庫の中は、プラスチックの部品を多く使用しているため、設置直後ににおいを感じる場合がありますが、冷えてくると徐々に少なくなります」
買ったばかりで気になる場合は、掃除より時間が解決します。
氷が臭うのは別の原因
見落とされやすいのが製氷機です。
「給水タンクや浄水フィルターが汚れていると、製氷機や、できた氷がにおうことが考えられます」
「製氷室に長期間置いたままにしていると、水道水の塩素が凝縮され、塩素が強くにおうことがあります」(日立)
庫内をいくら掃除しても、氷のニオイは消えません。担当が違います。日立も製氷機のお手入れを1週間に1回としています(後述)。
古い氷は捨てて作り直すのが早道です。
【前提】低温は菌を止めない
ここが最も誤解されている点です。
当サイトでは、靴と生ゴミの記事でも同じ話を扱いました。温度によって菌の状態は次のように変わります。
| 温度帯 | 菌の状態 |
|---|---|
| 30〜40℃ | 最も繁殖しやすい |
| 冷蔵(10℃以下) | 増殖が遅くなる。止まりはしない |
| 冷凍(-18℃以下) | 増殖が止まる。ただし死滅ではない |
冷蔵室は「菌が増えない場所」ではなく「増えるのが遅い場所」です。だから時間が経てば傷みますし、こぼれた汁を放置すれば臭います。
この考え方は 生ゴミの臭いを抑える3つの順番 でも使いました。生ゴミを冷凍するのは「収集日まで腐敗を遅らせる」ためで、殺菌しているわけではありません。
詰め込みすぎると10℃を保てない
食品衛生法では、冷蔵の基準は10℃以下と定められています。詰め込みすぎると、この基準を満たせなくなることがあります。
冷蔵室に食品を詰め込むと冷気の吹き出し口がふさがれ、庫内の温度が上がります。目安としてよく挙げられるのは7割で、食品同士のあいだにすき間を作ることが推奨されています。
ニオイの観点でも影響があります。
- 温度が上がる → 菌の増殖が速くなる
- 空気が動かない → ニオイがこもる
- 奥のものが見えない → 忘れられて傷む
脱臭剤を足すより、まず量を減らすほうが直接的です。
冷蔵室は7割、冷凍室は満杯に近いほうが効率がよい——という違いも覚えておくと役立ちます。冷蔵は空気を回して冷やし、冷凍は凍ったもの同士が保冷剤の役割を果たすためです。
【重要】庫内の掃除に重曹とクエン酸は使えない
ここは当サイトの他の記事とあわせて読むと、混乱しやすい部分です。
日立は、冷蔵庫のお手入れについて使ってはいけないものを具体的に列挙しています。
「アルカリ性、弱アルカリ性の台所用洗剤」「ガラス用洗剤」「塩素系漂白剤」「みがき粉、クレンザー、研磨剤」「粉石けん」「ベンジン、シンナー、アルコール」「重曹」「クエン酸、お酢」「熱湯」「たわし、研磨スポンジ」「化学ぞうきん」
重曹もクエン酸も、名指しで挙がっています。使ってよいのは次の1つだけです。
「台所用中性洗剤をぬるま湯で薄め、布に含ませてからふき取ってください」(日立)
「置く」と「洗う」は別の話
一方で、健栄製薬は冷蔵庫用として重曹1箱・2か月で交換という使い方を紹介しています。矛盾しているように見えますが、用途が違います。
| やっていること | 可否 | |
|---|---|---|
| 粉のまま置く | ニオイと湿気を吸着する。庫内に触れない | 問題なし |
| 溶かして拭く・こする | 庫内の表面をアルカリと研磨で洗う | メーカーはNG |
重曹のニオイ対策 完全ガイド で整理したとおり、重曹には「溶かして中和する」と「粉のまま置いて吸着する」の2つのモードがあります。冷蔵庫で使えるのは後者だけです。
クエン酸も同じで、クエン酸のニオイ対策 完全ガイド で扱った洗濯機の例と同様、酸が金属やコーティングを傷めるため庫内の掃除には向きません。
拭くときの注意
- 棚やポケットは「やわらかい布にぬるま湯をふくませて」ふき取る(日立)
- チルドルームなどは「固くしぼった布でふき取って」(同)——水分がすき間に入らないようにするため
- 「ドアパッキングが汚れていると、物が挟まったり変形することで冷蔵・冷凍の効果が落ち、故障の原因となってしまいます」(同)
ドアパッキンは見落としがちですが、汚れを放置すると密閉が甘くなり、庫内温度が上がります。ニオイと故障の両方に関わる部分です。
お手入れの頻度(日立が示す目安)
| 場所 | 頻度 |
|---|---|
| 製氷機 | 1週間に1回 |
| ドア表面・パッキング・汁受け部 | 1か月に1回 |
| 棚など | 3か月に1回 |
| 背面・電源プラグ | 1年に1〜2回 |
製氷機だけ頻度が段違いです。氷は口に入るものであり、水は汚れやすいためでしょう。ここを週1回と決めておくと、氷のニオイは起きにくくなります。
脱臭剤の期待値
日立の説明は率直です。
「冷蔵庫の脱臭機能は、すべてのにおいを完全に取り除くことはできません」
そのうえで、強いニオイの食品には「ラップをかけたり、タッパーに入れるなど、密閉・密封してから収納してください」と案内し、市販の冷蔵庫用脱臭剤をすすめています。
脱臭剤は「発生源を断ったあとの仕上げ」と考えてください。順番はこうなります。
- こぼれ・食品カスを拭き取る(発生源を断つ)
- 強いニオイの食品を密閉する(移るのを防ぐ)
- 量を7割に減らす(温度と空気の流れを保つ)
- 脱臭剤を置く(残りを吸着させる)
それでも臭う場合
庫内をきれいにしても改善しないときは、次を確認してください。
- 野菜室の下——ケースを外すと、こぼれた汁が溜まっていることがあります
- ドアポケットの底——調味料の液だれが固まりやすい場所です
- 製氷機の給水タンク——前述のとおり担当が違います
- 期限切れの食品——奥や下段に埋もれていないか
また、冷蔵庫の「周囲」が臭う場合は内部の問題である可能性があります。日立は、周囲のにおいについて「冷蔵庫の内部に問題が発生している可能性があります」として、販売店または修理相談窓口への点検依頼を案内しています。掃除で対応する範囲を超えています。
ひとこと
調べていて印象的だったのは、日立が「脱臭機能は、すべてのにおいを完全に取り除くことはできません」と自社製品の限界をはっきり書いていたことです。売る側がここまで書くなら、そのとおり受け取ってよいのだと思います。
もう1つ、冷蔵室は7割・冷凍室は満杯に近いほうがよいという逆転。理由を知ると納得できます——冷蔵は空気を回して冷やし、冷凍は凍ったもの同士が保冷剤になる。同じ「詰める」でも、効く理屈が違えば正解も逆になります。靴の消臭で冷凍が×、生ゴミで○だったのと同じ構図でした。
— ニオラボ編集室
よくある質問(FAQ)
Q. 重曹を庫内に置いてもよいですか?
粉のまま容器に入れて置く使い方なら問題ありません。健栄製薬は1箱・2か月での交換を目安としています。
ただし庫内を「洗う」用途では、メーカーが指定する中性洗剤に従ってください。重曹はアルカリ性で、研磨作用もあります。
Q. コーヒーかすや茶がらは使えますか?
吸着材として紹介されることがありますが、湿ったまま置くとそれ自体がカビる可能性があります。使う場合はよく乾かしてください。
そもそも発生源を断たないまま吸着材を足しても、根本は変わりません。
Q. 掃除の頻度はどのくらいですか?
日立が示す目安は製氷機が1週間に1回、ドア表面・パッキングが1か月に1回、棚などが3か月に1回、背面が1年に1〜2回です。
全体の大掃除より、こぼしたらその場で拭くほうが結果的に楽です。
Q. 電源を切って掃除すべきですか?
短時間の拭き掃除なら通常は不要ですが、庫内を大きく空ける場合は食品の温度管理に注意してください。前述のとおり、冷蔵は10℃以下が基準です。
夏場は特に、出しっぱなしの時間を短くしてください。
Q. 消臭剤で香りをつけてもよいですか?
おすすめしません。食品に香りが移る可能性があります。冷蔵庫用として売られている無香タイプの脱臭剤を選んでください。
まとめ
- 発生源はこぼれ・食品・氷・部品の4つ。氷が臭う場合は給水タンクの担当
- 冷蔵室は菌が増えない場所ではなく、増えるのが遅い場所
- 詰め込みすぎると冷気の吹き出し口がふさがれ、温度が上がる。目安は7割
- 掃除は台所用洗剤(中性)のみ。布は固く絞る。ドアパッキンも忘れずに
- メーカー自身が「脱臭機能はすべてのにおいを取り除けない」と明記している
- 順番は拭く → 密閉する → 減らす → 脱臭剤
冷蔵庫のニオイ対策は、実のところ温度管理と重なっています。すき間を作って冷気を回すことは、ニオイを防ぐと同時に食品の傷みも遅らせます。脱臭剤を1つ足すより、庫内を1割空けるほうが効くかもしれません。
参考にした情報
※本記事は公開されている情報をもとに整理したものです。お手入れの方法は機種によって異なります。お使いの製品の取扱説明書をご確認ください。