クローゼットを開けた瞬間の、あのこもったニオイ。久しぶりに出した服から同じ匂いがして、着る前に洗い直した——という経験はありませんか。

この問題には、順番があります。

クローゼットのニオイは、しまう前にほとんど決まっています。
そして防虫剤は「足せばよい」ものではありません。種類を混ぜると衣類にシミが付きます。

メーカーと業界団体が公開している情報をもとに、原因の切り分けから対策の順番まで整理します。

ニオイの正体は3つある

エステーは、クローゼットのニオイの原因を「服についた汚れや、クローゼットの隅に溜まったホコリやカビなどさまざま」と説明しています。

整理すると、次の3つが混ざった状態です。

正体 どこから来るか 効く対策
服についた汚れ 皮脂・汗・タバコや飲食店の煙 しまう前に落とす
カビ 湿気がこもった空間 換気・除湿
ホコリ 隅に溜まる 年に数回の掃除

エステーは、汚れについて「タバコや飲食店の煙、皮脂や汗などさまざまな汚れや雑菌が知らず知らずに付」き、「こうした汚れが酸化したり雑菌が繁殖することでニオイの原因となる」としています。

着たときは無臭でも、しまっている間に変化するということです。ここが「クローゼット特有のニオイ」の正体で、消臭剤を置くだけでは解決しない理由でもあります。

カビが増える条件

当サイトで繰り返し扱っている「菌が増える3条件」がここでも当てはまります。

  • 栄養——服に残った皮脂や汗、ホコリ
  • 水分——湿気、乾ききっていない衣類
  • 温度——閉め切った収納内はこもりやすい

3つのうちどれか1つを断てば増殖は止まります。クローゼットで最も断ちやすいのは水分です。

対策①:週に一度、開ける

エステーの解決策は明快です。

週に一回、日中にクローゼットを開けておき、中の空気を入れ替えましょう

費用も手間もかかりません。晴れて空気が乾いている日に行うと効果が上がります。雨の日に開けると、湿った空気を入れることになります。

さらに、

「年に数回、晴れて乾燥した日に中の服をすべて出し、隅にたまったホコリやゴミを掃除機で吸い取ってください」(エステー)

衣替えのタイミングと合わせると忘れにくくなります。

対策②:詰め込みを8割にする

収納量には目安があります。

収納する服の量は、全体の8割を目安にするのがおすすめです」(エステー)

全国クリーニング生活衛生同業組合連合会も「容器の中は衣類を詰め込みすぎず、8分目までにするのが理想的です」としています。異なる立場の2者が同じ数字を挙げている点は覚えておく価値があります。

理由は2つあります。

  • 風通しが悪くなる——湿気が抜けない
  • 防虫剤の成分が行き渡らない——すき間がないと拡散できない

服が入りきらない場合、収納を増やすより持つ量を見直すほうが根本的です。

対策③:しまう前に乾かす

ここが最も効きます。クローゼットの中に湿気を持ち込んでいるのは、多くの場合しまった衣類そのものだからです。

  • 部屋干しで生乾きのままたたんだ
  • 着たあとの汗が残ったまま収納した
  • クリーニングのビニールをかけたまましまった

最後の項目は見落とされがちです。ビニールは湿気を閉じ込めるため、持ち帰ったら外すのが基本です。

乾いたつもりでも中心部が湿っていることがあります。乾燥時間を短縮する方法は 部屋干しで臭くならない干し方 にまとめました。ライオンの実験では扇風機の有無で乾燥時間が最大4倍変わっています。

すでに生乾き臭が付いてしまった衣類は、しまう前に対処してください。原因菌は繊維の奥に入り込むため、通常の洗濯では落ちきりません。詳しくは 生乾き臭が取れない原因と落とし方 をご覧ください。

【重要】防虫剤は混ぜてはいけない

ここが最も実害のある落とし穴です。

全国クリーニング生活衛生同業組合連合会は、防虫剤を4種類に分類しています。

種類 他の薬剤との併用 ニオイ
ピレスロイド系 併用できる 無臭タイプが多い
パラジクロルベンゼン 不可 特有のニオイ
ナフタリン 不可 特有のニオイ
しょうのう 不可 特有のニオイ

「(1)ピレスロイド系は他の薬剤と併用できますが、(2)〜(4)は違う種類の薬剤と併用すると、衣類にシミが付いたり、変色する場合があります」(全国クリーニング生活衛生同業組合連合会)

古い防虫剤が残っているところに、種類の違う新しいものを足す——これが典型的な失敗です。効き目を強めるつもりが、衣類を傷めます。

買い替えるときは前のものを取り除いてから入れてください。種類が分からない場合は、パッケージの成分表示を確認します。

量は多いほうがよいわけではない

「防虫剤は適正量を守ることが大事です。少ないと効果が充分発揮されず、多すぎると一部薬剤(ピレスロイド系以外)では再結晶(気化した成分が個体に戻る)を起こします」(同)

再結晶は、気化した成分が衣類の上で固体に戻る現象です。白い粉のようなものが付くことがあります。

置く場所は「上」

「防虫剤は上から下に拡がるので、衣類の一番上に置くと効果的です」(同)

引き出しなら衣類の上、クローゼットなら吊り下げるタイプが理にかなっています。床に置いても成分は上がっていきません。

一方、湿気は低いところに溜まりやすいため、除湿剤は下に置く製品が多くなっています。防虫剤は上、除湿剤は下——役割が違うので、置き場所も分かれます。使い方は製品の表示に従ってください。

作業中は換気する

「衣類の入替え作業は換気をよくして行いましょう」(同)。閉め切った部屋で大量の防虫剤を扱うと、成分を吸い込むことになります。

すでにニオイが付いてしまったら

収納空間そのものが臭う場合、消臭剤を置く前に発生源を断つのが順番です。

  1. 全部出す——中身が入ったままでは原因が特定できません
  2. 掃除機でホコリを吸う——隅と床
  3. カビが見えたら拭き取る——素材に合った方法で
  4. 完全に乾かしてから戻す——扉を開けて風を通す

そのうえで、置いて吸着させる方法が使えます。重曹のニオイ対策 完全ガイド で解説したとおり、重曹には「溶かして中和する」と「粉のまま置いて吸着・吸湿する」の2つのモードがあります。収納空間では後者が向いています。

ただし重曹はアルカリ性なので、酸っぱい系のニオイには効いても、すべてに効くわけではありません。カビ臭には吸着として働く程度と考えてください。

木部や壁が湿っている場合は、拭くより乾かすことが先です。濡れたまま消臭剤を置いても、条件が変わりません。

素材別の注意

素材 注意点
ウール・カシミヤ 害虫の標的になりやすい。防虫剤が特に必要
革製品 湿気でカビが出やすい。密閉しない
シルク デリケート。防虫剤の直接接触を避ける
化学繊維 虫害は少ないが、皮脂が残るとニオイの元になる

虫害を受けるのは主に動物性の繊維です。素材ごとの性質は 靴下の素材比較 でも扱っています(吸湿性と放湿性の違いは、収納中の衣類にも当てはまります)。

ひとこと

調べていて意外だったのは、エステーと全国クリーニング生活衛生同業組合連合会が、揃って「8割」という同じ数字を挙げていたことです。片方は製品を売る立場、もう片方は業界団体。立場が違う2者が一致する数字は、それだけ根拠があるとみてよさそうです。

そして防虫剤の併用。「効かないから足す」が、いちばんやってはいけないことだったというのは、かなり意外でした。ニオイ対策では「足す」発想になりがちですが、この記事に関しては減らす・開ける・乾かすのほうが先です。

— ニオラボ編集室

よくある質問(FAQ)

Q. クローゼットは開けっ放しにしたほうがよいですか?

常時開けておく必要はありません。エステーが挙げているのは週に一回、日中です。ただし湿度の高い日や雨の日に開けると逆効果になるため、天気を見て行ってください。

Q. 除湿剤はいつ交換すればよいですか?

製品によって異なりますが、水が溜まるタイプは満水になる前に交換します。放置すると吸湿しなくなり、置いてあるだけの状態になります。

季節によって減り方が変わるので、梅雨から夏は早めに確認してください。

Q. 防虫剤の種類が分からない場合は?

パッケージの成分表示を確認してください。分からないものはいったんすべて取り除いてから、新しいものを1種類だけ入れるのが安全です。

Q. 香りつきの防虫剤や消臭剤で隠せませんか?

発生源が残ったままだと、元のニオイと香りが混ざることがあります。掃除と乾燥を先に行ってから使ってください。

Q. 押し入れとクローゼットで対策は違いますか?

基本は同じです。ただし押し入れは奥行きがあり空気が動きにくいため、すのこを敷いて床から浮かせる、衣装ケースを壁から少し離すなど、空気の通り道を作る工夫がより重要になります。

Q. カビが広範囲に出ています

建材にまで及んでいる場合、家庭での対処には限界があります。結露や雨漏りなど住まい側の原因が疑われるときは、管理会社や専門業者に相談してください。

まとめ

  • ニオイの正体は服の汚れ・カビ・ホコリの3つ。着たときは無臭でもしまっている間に変化する
  • 週に一回、晴れた日に開けて換気する。年に数回は全部出して掃除機をかける
  • 収納量は8割まで(エステー・クリーニング組合連合会が一致)
  • しまう前に完全に乾かす。クリーニングのビニールは外す
  • 防虫剤は種類を混ぜない。ピレスロイド系以外は併用でシミ・変色の恐れ
  • 量は適正に(多すぎると再結晶)。防虫剤は上、除湿剤は下

ニオイ対策というと、何かを置いて解決しようとしがちです。しかしクローゼットに関しては、置く前にやるべきことが3つ——開ける、減らす、乾かす。ここを済ませてから、必要なものを足してください。

参考にした情報

※本記事は公開されている情報をもとに整理したものです。衣類や収納の素材によって適切な扱いは異なります。使用する製品の表示をご確認ください。